民謡について

民謡という語は、大正時代半ばごろから現在の民謡の概念をもつようになったといわれ、それ以前は、俚謡(りよう)、俚歌、巷謡(こううた)、田舎歌(いなかうた)、地方歌などと呼ばれていた。

民謡には人々の喜びと悲しみの心情が込められ、喜怒哀楽を見事に表現し、その基本は祝福で祝唄が多く残され、祖先からの願いである「しあわせ」とは何かという答えは、庶民の生活の中で、思いを込めて歌われてきた民謡の中に残されています。
一例として、作業唄もその作業への祝福の精神があり、日常生活の中で培われてきた唄も、その生活がよかれと祈り、よかれと予祝(前祝)する心のあらわれと考えられます。

また、民謡はその唄の機会や、情況(社会的、精神的、自然的など)、場所などを背景に生まれ、その土地特有の意味を持つ方言を理解して、歌詞の意味と唄の心を十分理解して歌唱することによって、人の心の響きと美しい音として出てくるものです。もともと手拍子などで歌っていた民謡は、近年三味線伴奏の手が付けられ、一層人々の心に浸透していくことになりました。
それと同時に、健康的な歌唱をするため、腹式呼吸を会得することが肝要です。

民謡の分類には、「労作唄」(農耕に関するもの、木樵に関するもの、漁労に関するもの、諸職に関するもの、交通運搬に関するもの)、「祭唄、祝唄」(祭りに関するもの、祝儀に関するもの、行事に関するもの)、「踊唄、舞謡」(盆踊り、風流唄)、「座興唄」(酒宴など)、「語り物」(祝福芸のうた、万歳など)、「子守唄」、「わらべ唄」、(遊戯唄、唱えごと)など現在の実態に対応した分類である。(民謡緊急調査報告書による)

●民謡音階について

日本民謡音階は、ディスジャンクトとコンジャンクトの二通りの型を持ち、四度組織(テトラルコルド)の両端を「核音」といい、その中間音一つを「浮遊音」(千藤幸蔵邦楽理論)として、その浮遊音の規則的な移動により音階が決まります。また浮遊音の微妙な使い方により曲の表情を表現しています。

ディスジャクント 二つの四度組織が長二度(短三度)離れた核音で繋がる場合。
コンジャクント 四度組織を積み重ねるとき、二つの四度組織を一つの核音を共通の核音として直接上下に接続する場合。
テトラコルド 四度組織。